収入半減でもハッピーに
森永:個人のライフスタイルもどんどん変わっていくと思いますよ。デジタルで仕事をしながら、地方で暮らすような流れがもっと出てくる。
永濱:これまでと同じように漠然と不安を感じながら貯蓄するよりも、もう少し前向きにできることはあると思います。たとえば、携帯電話の通信料は4割下がったといわれますが、家計調査をみると、その10分の1の4%しか下がっていない。格安スマホに乗り換えるなど、積極的に通信料を見直す人が非常に少ないんです。私の場合、家族4人で見直したら、年間10万~20万円は安くできたので、電気やガスの自由化も含めて、積極的に生活費を見直すこともできるはずです。
それから、フリマアプリも活用できます。この前、知り合いがスマホの古い箱だけ出品したら、500円ほどで売れたのでビックリしました。家に眠っている不要品もお宝に化けたりするんです。「ネットなんて」と思わずにチャレンジしてみると意外な稼ぎになるかもしれませんよ。
馬渕:個人の暮らし方は二極化していて、田舎暮らしが持て囃される一方で、大都市の近くに住むことで大都市雇用圏が拡大している事実もある。完全なデジタル田園都市国家にはまだなっていない。そうした価値観が多様化するなかでは、自分がなじむところで生きるのが一番だと思います。
永濱:働き方もそう。副業がしやすくなっていることに加え、テレワークで生じる時間的余裕を生かして投資もしていけば、年金不安の解消にもつながる。自分がまだ使えていないモノやお金、働き方も含めて生産性を上げることはできるはずです。
森永:私の計算では、30年後にもらえる年金は夫婦で月13万円まで下がる。それに備えて、私は月13万円生活を2年間続けています。“自産自消”といって、畑を借りて野菜を作ったり、電気も太陽光で余った分が売れたりする。コロナで講演やイベントが激減して収入は半分以下になりましたが、ものすごくハッピーになりました。何が起きるかわからない時代ですから、それぞれができる備えをして蓄えを増やしていきましょう。
【プロフィール】
森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年生まれ、東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。『情報ライブミヤネ屋』(日本テレビ系)ほか、多数のメディアで活躍中。
永濱利廣(ながはま・としひろ)/1971年生まれ、栃木県出身。1995年、第一生命保険入社。2016年から第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストに就任。
馬渕磨理子(まぶち・まりこ)/滋賀県出身。京大院卒。経済アナリスト。ニュース番組『FNN Live News α』(フジテレビ系)にコメンテーターとしてレギュラー出演中。
※週刊ポスト2022年1月14・21日号