効果的な利他主義では、投資と同様に、寄付や慈善もコストに対するリターンを最大化するべきだと考えます。日本で地震や台風などの自然災害が起きると多額の義捐金が集まりますが、効果的な利他主義者は、被災者を支援できるゆたかな国に寄付しても、“善意のコストパフォーマンス”を最大化できないと主張します。
同じお金を使うのなら、先進国より貧困問題が深刻なアフリカで活動する慈善団体に寄付をしたほうが“コスパ”が高い。慈善活動も「エビデンスベースド」であるべきで、投資したお金を上回るリターン(よいこと)が得られることを証明しなくてはならないのです。
これもまた「貨幣経済」から「評判経済」への移行が生んだ新しい現象かもしれません。これからは顕示的消費がますます意味を失い、その代わり「お金をどう使えばより効果的に評判を獲得できるか」が重要になっていくのではないでしょうか。
【プロフィール】
橘玲(たちばな・あきら)/1959年生まれ。作家。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。その他の著書に『上級国民/下級国民』『無理ゲー社会』など多数。最新刊は『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』。