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買い手がつかない「負動産」を襲う固定資産税 年金暮らし60代男性の苦悩

固定資産税は売るに売れない“負動産”にも容赦なく課される

固定資産税は売るに売れない“負動産”にも容赦なく課される

 オミクロン変異株の感染急拡大により景気のさらなる悪化が危惧されるなか、一部の国民においては「税負担が増す」事態に直面している。昨年度、新型コロナウイルスの特例として導入された固定資産税の軽減措置が、住宅地と農地で終了することとなったからだ。社会問題に詳しいライターの奥窪優木氏が、負担増に苦しむ60代男性の話を聞いた。

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 固定資産税の税額算定の基準となる課税評価額は、3年に一度行われる固定資産の評価替えに従い、地価が上昇した土地には年度当たり5%を上限に加算されていく。しかし、昨年度はコロナ禍の経済状況を鑑み、すべての土地について、地価が上昇しても課税評価額を増額させない特別措置が講じられていた。

 コロナ不況から脱却しない現状を踏まえ、政府・与党内でも延長することが議論されていたこの特別措置だが、昨年12月に決定した2022年度税制改正大綱では、住宅地と農地で終了となって元通り5%を上限に加算されることとなった。商業地は、通常の半分の上昇幅である2.5%を上限に加算される。

 これにより、固定資産税の納税義務者は600億円程度の負担増となるとみられている。逆に言えば、固定資産税の課税者である地方自治体は、600億円の税収増となる。コロナ不況にあえぐ国民や事業者よりも、コロナ禍で逼迫する自治体の財政の懐事情を優先した格好だ。

 もちろん、経済格差の拡大が指摘されるコロナ禍において、租税による富の再分配の重要性は否定できない。特に、保有資産を課税対象とする固定資産税なら「なおのこと」と言えるかもしれない。しかし、世間がイメージする固定資産税が「資産家」のみを課税対象としているかといえば、必ずしもそうではない。実際には資産価値を持たない、いわゆる“負動産”に対しても無慈悲に課税されているからだ。

 山崎賢三さん(仮名・60代)は、関東某県のとある有名観光地で営んでいた宿泊施設を2020年10月に閉業した。コロナ禍で客足が途絶えたことが直接の原因だ。現在は、年金暮らしという山崎さんだが、固定資産税に苦しめられている。

「閉業にともない、法人名義の資産についてはすでに清算しましたが、個人名義の築50年の鉄骨4階建ての建物と、その敷地と駐車場に利用していた土地合わせて約2000平米など、評価額で3800万円分の不動産については、今も年間41万円の固定資産税がかかっています。貯蓄もほとんどなく、妻と2人で月23万円の年金暮らしの我々にとっては大きな負担。今年度分からは滞納している状況です」(山崎さん・以下同)

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