企業買収などを経て、中国資本に売られる「日の丸ブランド」は数多い。たとえば2011年には、大手電機メーカーNECが「LAVIE」ブランドで知られるパソコン事業を中国レノボとの合弁会社に移管。NECはレノボと合弁事業化した理由について、「当社単独で継続的な事業成長を実現していくことは困難と判断し、レノボの資材調達力を組み合わせることでさらなる事業成長を図るため」(広報室)と回答している。
こうした事業売却は、国内市場の縮小などで経営不振が続いたところに、中国企業やファンドが救いの手を差し伸べる形で実現したものが多い。
企業コンサルタントの安田礼一氏は、レノボと合弁事業化したNEC社員の事情についてこう話す。
「パソコン事業を担当していた社員はレノボに移管し、日本国内の社員はレノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータの所属となりました。国内の社員の仕事は基本的にそのまま継続しています。合弁会社になっても働き方は変わっていないということです。ただ、レノボに行った社員は、工場の従業員はそのままですが、管理部門は中国拠点が管理するようになったので、経理担当は3年ぐらいしてから多くが解雇となっています。これは中国に限らず、外資系に買収されればそのような扱いになる典型例でしょう」
この流れは、コロナ以降も続いている。
「出資先の中国関連会社や、中国で展開する自社子会社の中国企業への売却が多いことが分かります(別掲の表参照)。理由は、製造拠点である中国で人件費が上昇してコストが掛かり、子会社を手放さざるを得なくなったからです」(同前)
太平洋セメントは、中国河北省にある連結子会社(1995年設立)を中国企業に完全売却した(2020年9月)。また、総合化学大手の三井化学は、2011年に設立した紙おむつ向け不織布の製造・販売子会社を、中国広東省の同業他社に売却した(2021年5月)。
関連会社の持ち株を手放した例もある。三菱自動車は、経営不振で中国の自動車メーカー東南汽車の保有株式25%をすべて譲渡(2021年4月)。空調・熱源製品を製造販売する昭和鉄工は、1995年に設立した中国企業との現地合弁会社の持ち株(30%)を、パートナー会社の求めですべて譲渡した(2021年12月~2022年1月)。