元内閣官房参与で『日本を喰う中国』(ワニブックスPLUS新書)を上梓した京都大学大学院教授の藤井聡氏はこう語る。
「個々の企業に事情があるのはよく分かりますが、日本企業の固有の技術は、日本の競争力の源泉です。これが企業買収により中国に流出することは、問題と言わざるを得ません。さらに、日本企業の中国子会社であれば技術が流出する懸念はありませんが、オーナーが中国企業になれば、技術が流出する可能性があることは否定できません。日本政府が買収されないよう保護すべきです」
中国人経営者に雇われる
藤井氏が懸念するのは技術の流出だけではない。
「企業が中国に買われた結果、日本製品であっても、消費者が製品を購入した代金(企業の売上金)の多くが中国に流出します。加えて、日本人従業員は、中国人経営者に雇われることになる。年功序列型賃金や終身雇用など“日本的経営”は望めないと考えていい」
自民党外交部会長の佐藤正久・参院議員は言う。
「企業防衛という点では、今国会に経済安保法案が提出されますが、今回はサプライチェーンがメインの対象の法案で、海外資本による日本企業買収に対するには不十分です。エネルギー関連や、国内電子データの保護など、企業防衛に役立つように、議論の対象を広げていくべきだと思います」