2025年に日本社会は大きな転換点を迎える。「団塊の世代」の約800万人が後期高齢者となり超超高齢社会に突入するのだ。
かつて「熟年離婚」が社会現象になった。団塊世代が定年を迎える頃のことである。この世代は日本の家族制度を「大家族制」から「核家族」へと変えた。家を出て就職し、恋愛結婚して夫婦と子供で生活、郊外にマイホームを持ち、「ニューファミリー」と呼ばれるライフスタイルをつくりだした。
一方、この世代の男性サラリーマンたちは「企業戦士」と呼ばれ、家事や子育てをすべて妻に任せ、勤め先での激しい出世競争に身を置いてきた者が多い。そして定年を迎える頃、「あなたは家庭を顧みなかったじゃない。これからは私も好きに生きていきます」と、妻から三行半を突きつけられたのだ。
そうした熟年離婚に対応するため、政府は夫婦の「年金分割」【*注】という制度を創設(2007年)して離婚後の妻の生活基盤を整えたほどだ。
【*注/離婚した際に夫婦2人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する年金額を分割できる制度】
そうして核家族で熟年離婚が多い団塊世代が後期高齢者になると、“おひとりさま”問題が深刻化することが懸念されている。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏の指摘だ。
「団塊世代は年老いた親を介護し、看取ってきた。ところが、自分が年老いると子供に頼ることなく1人で施設暮らしをしたり、家族がありながら自宅で独居老人となっている人が多い。2025年以降は見守りが必要になる独居老人の数が爆発的に増えていく可能性があります」
独立心が強く、家族にも頼りたくないという人も多い。東京郊外の公団住宅で一人暮らしの72歳の元国鉄マンの話を聞いた。
「8年前に家内に先立たれ、マンションを売ってこの公団に越してきました。私は身体的にも全く健康で家事も自分でできる。ただ、周囲には1人暮らしの高齢者が多く、ある老人の孤独死をきっかけに住宅内で“見守り隊”が結成された。私も参加して郵便受けに新聞や郵便物が2日分溜まるとドアをドンドン叩いて安否確認したり、ことあるごとに声かけをしています」