GAFAMを代表とする巨大IT企業の成長は目覚ましく、こうした先端企業によって社会構造は大きく変化しつつある。「サイバー&AI革命」の行き着く先はどうなるか。経営コンサルタントの大前研一氏が未来を予測する。
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今年の私の研究テーマは「第四の波」、すなわち「サイバー&AI革命」が世の中にもたらす変化だ。これはアメリカの未来学者で私の友人でもあったアルビン・トフラー氏が1980年に上梓したベストセラー『第三の波』をヒントにしたものである。
トフラー氏は1928年にニューヨークで生まれ、1949年にニューヨーク大学を卒業。新聞記者、フォーチュン誌の編集者、AT&Tの経営コンサルタント、コーネル大学の客員教授などを務め、2016年にロサンゼルスの自宅で亡くなった。『第三の波』のほか『未来の衝撃』『未来適応企業』『パワーシフト』などの著書がある。
トフラー氏は「第一の波」の「農業革命」によって農耕社会、「第二の波」の「産業革命」によって工業化社会になったのに続き、次は「第三の波」の「情報革命」が起きて脱工業化社会になると主張した。インターネットが普及する約20年も前に、情報化社会の到来を予見していたのである。
ただし、これまでの3つの波には前半と後半がある。前半は雇用を大量に創出するが、後半はその雇用が削られていくのだ。
たとえば農業革命の場合、前半は人間が手作業で耕作していた。しかし、後半はその多くがトラクターなどの機械に置き換えられ、農民が減少していった。日本の場合、1950年は就業人口の45%が農業に従事していたが、2021年の基幹的農業従事者【*】は就業人口の2%(約130万人)でしかなくなっている。
【*基幹的農業従事者/ふだん仕事として主に自営農業に従事している者】
続く産業革命では、工業化社会の前半は工業製品・部品を作る工場で膨大な人々が働いていたが、後半はロボットなどで自動化・省力化され、人間はどんどん削減された。
そして情報革命も、前半はコンピューターの導入によって高度化した経理、総務、購買などの事務処理を担う間接業務のホワイトカラーが大勢必要になった。しかし、やはり後半はそれらの仕事がITに置き換えられていき、いまや徹底的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を実行すれば、ホワイトカラーの人数は従前の10分の1で事足りるようになっている。