スーパーの鮮魚コーナーや野菜コーナーで目にする「国産」の表示。無意識に「安心」「おいしい」と思ってしまう人もいるだろうが、その「国産」は本物だろうか──。最近では、「熊本産あさり」の産地偽装が明るみに出たばかり。その他、うなぎでも中国産を国産と偽るケースが後を絶たない。高級魚では、幻の魚と呼ばれる「クエ」の偽装事件も発覚している。
和歌山県にほど近い大阪府泉佐野市。古くから漁業が盛んな地で、大阪府でも一、二を争う漁獲量を誇る。沖合には関西国際空港があることでも知られている。
漁師として30年以上のキャリアを持つ鈴村仁志さん(仮名・50才)はこう語る。
「かれいや鯛、わたりがになどいろいろ取れるんやけど、最近はクエもたまに揚がるよ。クエはスズキ目ハタ科の魚で、体長1m程度。超高級魚として、この20年ほど1kg5000~1万円の高値で売れる。
あれは15年くらい前やったかな。岸和田市内にある水産会社が、1kg700~1500円くらいで取引されるギンダラ科の『アブラボウズ』という魚を、クエとして販売した。アブラボウズは、さばく前ならクエとまったく違う見た目やけど、さばいて切り身にすると違いはわからんわ」
刺し身なら、歯ごたえや脂のノリで見分けることも可能だが、鍋料理に使われると違いがわかる素人はほぼいないという。その上、アブラボウズの脂質は消化されにくく、食べすぎると下痢を起こす恐れがある。
「偽装した水産会社は、『クエと表記した方がよく売れる』と言ったそうやけど、よう売れて、5~6倍の値になるんやったら、そらやめられんわな。だから、こういうことは後が続く」(鈴村さん)