3月9日の韓国大統領選で、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が当選を果たした。5月に発足する新政権の前に立ちはだかるのが、韓国経済の危機的状況だ。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、韓国政府は日本より厳格な感染防止対策『K防疫』を推し進め、それによって大打撃を受けた中小企業と個人事業主を対象に、文在寅政権は大規模な金融支援措置を発動した。その支援措置は今年9月まで延長されることが決まったが、中小企業や自営業者の債務残高が雪だるま式に膨らんでいくことは確実で、金融システムの「9月ショック」も予想されている。
債務に喘ぐのは企業ばかりではない。韓国銀行によると、韓国の家計債務は昨年6月に過去最大の1805兆ウォン(約180兆円)に達した。在韓ジャーナリストが語る。
「家計債務は1年に168兆ウォンの急伸で、現在はGDP比で100%を超えた。つまり、韓国の家計にはGDPを上回る債務があるのです。背景にはコロナ禍での住宅ローン返済や収入の補填、借入による投資ブームがあります」
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、韓国の1世帯が抱える債務は平均で年間所得の171.5%に上る。
企業や家計の債務が激増するなか、最も懸念されるのは金利上昇だ。
「これから金利が上昇すれば、債務を抱えた企業と家計の負担がさらに増します。政治経験のない尹次期大統領が、こうした難問に対処できるとは思えません」(在韓ジャーナリスト)
目下、韓国は不動産価格の上昇に歯止めがかからない。KB国民銀行の調査によると、ソウル市内のマンションの平均取引価格は2017年の文政権誕生以来急上昇を続け、5年間で2倍以上となる1億2000万円超を記録した。国内では「宝くじに当たらないとソウルには住めない」と言われるほど、国民の多くが不動産高騰に不満を抱き、社会不安が広まっている。大韓金融新聞東京支局長の金賢氏が語る。
「問題は、そうした閉塞感を打開するきっかけがまるで見えないことです。若者の就職難は続き、少子高齢化も加速するばかり。昨年の合計特殊出生率は0.81と6年連続で過去最低を記録しました。OECD加盟国のなかで出生率が1を下回るのは韓国だけで、5年後には0.6を切ると言われます」