山東料理では皮は玉子のほうがポピュラー
『珍味』の「ハルマキ」
そんな下関氏が「玉子春巻きが有名な大阪の町中華」として注目するのは、大阪市天満駅から徒歩5分、創業50年を越える老舗『珍味』。ランチタイムには中華の枠を越えた「カツカレーセット(650円)」や「とんかつ定食(600円)」が安価に食べられる、町中華のお手本のような店だ。
大阪の老舗町中華『珍味』
記者も夕方18時ごろ訪問し、メニュー表の「ハルマキ(680円)」を注文。出てきた春巻きの皮は確かに黄色で、断面からは薄焼き玉子の二層目、三層目がのぞく。添えられた塩につけて食べると、ほのかに甘い玉子の皮と塩の味がマッチし、食べ応え十分だ。同店の店主に話を聞いた。
「この店を出す前に修行していた店では、普通のと玉子の、2つとも出しとったんですわ。俺が玉子のが好きやったから、ここではそっちしか出してない。玉子の皮のほうがボリュームが出るし、他で出してる店が多くないから、皆さん喜んでくれます」
『珍味』のメニュー表
この玉子春巻きの東京進出のはしりと言われるのが、錦糸町駅から徒歩7分、創業20年の中華料理屋『蓬莱春』だ。同店のメニューには玉子春巻きが載っている。夜19時過ぎに訪問すると、看板には「中国山東菜」の文字が。いわゆる町中華ではなく、中国人夫婦が経営する大衆山東料理の店だ。
『蓬莱春』の「自家製玉子皮春巻」
メニューの「自家製玉子皮春巻(500円)」を注文。10分後に出てきたのは、大阪で食べた「ハルマキ」とほとんど同じ見た目ではないか。口にすると、ビールと言うより白米に合いそうな、どこか懐かしい味わいがたまらない。
玉子春巻きの東京進出のはしりと言われる『蓬莱春』
『蓬莱春』のメニュー表
店主に話を聞くと、熱く話してくれた。
「山東料理では、春巻きの皮は玉子の方がポピュラーなんです。日本の関西で玉子春巻きがあることは知っていますが、おそらく普通の春巻きとは違うルートで、山東料理を知る人が個人的に大阪で広めたんだと思います。
もともと関西に住んでいた人が『ここにあった!』と喜んで食べに来てくれたりします。最近はインターネットで見つけて、遠方からわざわざ玉子春巻きを食べに来てくれる人もいる。東京で『玉子春巻きブーム』を起こせたらいいなと思います」
「幸せの黄色い春巻き」が、日本全国を席巻する日は来るか。