簡単に希望の部署に異動できない
一部上場企業の有名大手メーカーを8年勤務して辞め、現在中堅IT企業で働く30代女性・Bさんは、元々、大企業に就職した理由をこう語る。
「正直、自分じゃなきゃできない仕事とか、あまりしたくなかったんです。自分の代わりが効く働き方がいいと思っていました。だって、その方が休みやすいし……。前いた会社は、有給休暇を取得しないと注意を受けるほど休みに対して寛容で、社風も穏やかで、とにかく居心地はよかったです。ただ、大企業は高給だと思われがちですけど、私のいた会社は、役職がつかないとそこまで高くありません。それでも、ずるずると8年も働いてしまいました」(Bさん)
大企業で居心地も良さそうに働いていたBさんだが、実はずっと“自分はこのまま会社に居続けていいのか”と悩んでいたという。
「転職した同期や先輩たちを見ると、なんだか『前に進んでいる』感じがして、単純にすごいと思えるし、うらやましかったんですよね。『他の会社でも通用する』って、社内だけじゃなくて社会でも認められている感じがするというか。私も『自分は他でもやっていけるのか』と、転職する気はないけど転職サイトに登録してみたことがあるのですが、他の会社からオファーが来ることで、自分の存在意義を確かめていた気がします」(Bさん)
そんなBさんが会社を辞める決定打となったのは何か。「社内異動の希望を出し続けるよりも、転職した方が希望職種に就ける可能性が高いことに気づいたんです」と語る。
「総合職としてさまざまな部署で経験を積む中で、自分でもやってみたいと思える業務が見つかったんです。ただ、数年ほど異動希望を出し続けてみたものの、まったくそこに行ける見込みが感じられなかった。それなら転職した方が早い。例えば社内の広報・宣伝部署に希望を出し続けて叶わないよりも、広報・宣伝担当を募集している会社に転職するほうが話が早い、というイメージです。
もちろん、その会社だからこそ、その部門に行きたいという場合もあるとは思いますが、やはり大企業は人事異動にもさまざまな社内政治や思惑がからんでくるし、時間もかかる。そういう考えに行き着いたとき、『一度辞めてみよう』と思ったんです。
前職の会社の話をすると『もったいない』と言われることが多いですが、散々悩んだ末の決断なので、後悔は全くありません。大企業で働くメリットと、このまま悩んで働き続けることのデメリットを天秤にかけると、私にはデメリットの方が上回ってしまった結果なので」(Bさん)