多くの時間と労力が費やされる就職活動。新卒でも中途でも、内定を獲得したら安易に辞めることは避けたいし、できれば長く働きたいというのが本音だろう。だが、そんな思いとは裏腹に、せっかく入社した会社を短期間で退職してしまう人たちもいる。新卒・中途問わず、入社1か月以内で“超短期”退職した経験がある人たちに、その理由と事情を聞いた。
1か月のはずの地方研修が1年に延長された
かつて、新卒で入社した印刷会社を「1か月」で退職したというのは、現在IT企業に勤務する30代男性・Aさんだ。内定ゼロの“無い内定”で苦戦した就活で、ようやくつかみ取った内定だった。
「当時はリーマンショック直後で、売り手市場から一転して内定率が急降下した時期でした。就活の解禁が大学3年の10月で、内定が出たのが4年の11月というギリギリのタイミング。就職できただけでありがたいと思ったものです」(Aさん)
やっとのことで就職できたAさんだが、入社後、想定外の事態が待ち受けていた。面接で聞いていた地方での工場研修の期間が大幅に延長されたのだ。
「当初、入社直後にもうけられた地方での工場研修は1か月だと聞いていたのに、途中で1年に延長になったと知らされました。しかも習熟度によっては、さらに延長もあり得ると聞かされたんです。2か月とかならまだしも、1年はひどくないですか? そもそも僕は本社採用で、転勤もないという話だった。地方勤務は想定していない。工場は車がないと生活できないような場所にあるし、当時、免許を持っていなかったこともあって慌てました」(Aさん)
いくら研修期間とはいえ、突然の延長を受け入れ難かったAさん。同期入社の男性に愚痴ると、『俺は延長1か月だけど?』と意外な言葉が返ってきた。
「さらに工場のベテラン社員に、そういうことがあるのかと話を聞いてみたら、『あの子は社長と同じ出身大学で、いわゆる出世コースだから特別なのでは?』という話でした。かつ、工場は将来的にたたむ予定であることも。内定を取り消しされなかったのは幸いでしたが、複雑な気持ちでした。ここにいても何にもならないと思って、当初の予定の研修期間だけは頑張りましたが、それを終えたら辞めようと心に決め、実行しました。今振り返っても、辞めてよかったと思います」(Aさん)