2013年、抗がん剤治療中の体をおして、モナコの世界選手権に出場した。
「知人の学生から『明日の飛行機で出場してきます』と連絡が来たので、『この子に手伝ってもらえば私も行ける!』と、その場で決めました(笑い)」
ウィッグを被って臨んだ大会では、スーパージャックポットという種目で優勝。そして2014年と2018年、念願の世界チャンピオンを獲得した。まさに命がけの勝負の日々だったが、バックギャモンから得た教訓も大きい。
「バックギャモンって、人生のようなもの。たとえば、“親ガチャ”で親は選べないといいますが、重要なのはその人の生き方ですよね。バックギャモンも、サイコロの目は選べませんが、勝負は戦い方で決まります。自分ではコントロールできない物事をどう生かすか。運のよし悪しは、自分の行動次第だと思うんです」
勝負の世界で生きる人の強さをひしと感じるひと言だ。
「勝負といえば、各地のカジノでポーカーをやって滞在資金の足しにすることもあります(笑い)。ポーカーは対人ゲームですし、バックギャモンで培った確率の考え方が生かせるので、戦略を知らない観光客相手なら、まあ負けないかな。でも、ルーレットは無理。私は勝てる勝負しかしません(笑い)」
涼しい表情で、そう語った。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2022年5月5日号