まず、トイレで用を足した後、どうやって水を流すのかがわからない。
「これかな?」
と、目に付いたボタンを押しても、ウンともスンともいいません。すると、部屋の電話が突然ビービー鳴り出しました。あわてて受話器を取ると、
「磯貝様、どうなさいましたか? 大丈夫ですか?」
それはフロントから安否を問い合わせる電話でした。僕が押したのは緊急呼び出しボタンだったのです。
ちなみに、母ちゃんが埼玉から部屋を見にやって来たときも、まったく同じことをやらかしてしまい、親子で赤っ恥かいてしまいました。
加えて、便利に違いないと思い込んでいた備え付けの家電も、実はかなりのクセモノ。ほとんどが海外メーカー製で、使い慣れた日本のものとは勝手がまったく違うのです。
ちょっとした説明書きはあるけれど、表記は全部英語。これじゃさっぱりわかりません。
当時のヒルズにはあのリーマン・ブラザーズをはじめ、外資系企業がたくさん入居していたので、どうやらこのマンションにもこうした企業の偉い人が多く入居していたようです。そういう人たち向けに、家電もあえて、アチラのものをそろえたのでしょう。
日本の住居では当たり前の、玄関で靴を脱ぐつくりにはなっていないことをみても、外国人入居者を意識して作られたマンションのようでした。
別に冷蔵庫ぐらいなら問題ないのですが、これが洗濯機や乾燥機になるともうお手上げ。おっかなくて使えないのです。フロントに問い合わせればすぐに教えてくれるんでしょうが、英語できないのがバレるのも恥ずかしくてついつい放置。
まあ、フロントでクリーニングも受け付けているので問題ありませんでしたが。