そこで、「値段調査」と称して、仲間たちと1週間連続でキャバクラ通いをしてみました。ひとつの店に7時間居座ったかと思えば、次から次へとハシゴしてみたり。とにかく気の向くままに豪遊したのです。
六本木はキレイな子が多いと聞いていたけれど、確かにそうだなと納得しました。接客も上手で楽しい。埼玉とは比べ物にならないくらい、すべてが垢抜けていました。
でも、だからといってこれからも通い詰めたいとは思いませんでした。むしろ1週間で飽きがきてしまいました。なぜなら、とにかく高いのです。
この値段なら、そこそこのメシが5回は食えます。どんなに楽しい思いをしても、送られてきた請求書を見るとすっかり萎えてしまうんですよね。
ヒルズで暮らすようになってからは、女の子なんて誘えば何人でもカンタンに集まったので、彼女たちを連れて普通の店やヒルズクラブに行ったほうがずっといい。たまにならいいけれど、日常的に行くようなところではないと思いました。
それからは、キャバクラ通いはやめ、普通の店を開拓するようになりました。僕はたいてい仲間をたくさん連れていて、一度にけっこうな額を支払うので、いつの間にやらあちこちでVIP扱いされるようになりました。
「磯貝」とか「きよさん」で通じる店が増えてきて、仲間たちは僕のいないときでも僕の名前を出せばいろいろサービスしてもらえると喜んでいました。
有名な会社経営者やセレブが会員リストに名を連ねる六本木ヒルズクラブでも、一番お金を落としているのは僕だと言われるようになりました。
そんな毎日を送っていると、だんだん僕に関するウワサが、尾ひれが付いて六本木じゅうを飛び交うようになり、そのうちどこへ行っても、
「ウワサは聞いていますよ」
なんて言われて、困ってしまいました。
「ヒルズに、磯貝あり」
ウソみたいな話ですが、当時の僕は本当にそんなふうに言われていたのです。