そもそも、第二次世界大戦後の1945年に設立された国連は、当時の戦勝国5か国(アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国)だけが常任理事国として拒否権を持つという不合理なシステムになっている。
しかも、77年前とは2つの国の実態が変わっている。ロシアはソ連、中国は中華民国(現在の台湾)だった。今のロシアと中国に常任理事国の資格があるのかも本来問われるべきだが、両国はその地位に居座っている。
また、日本はこれまでも国連改革の一環としてドイツ・インド・ブラジルとの4か国同時の常任理事国入りを求めてきたが、いまだに実現していない。
国連の機能不全の根本的な解決策は、企業経営の手法で言えば2つしかない。
1つは「当事者は意思決定に加われない」ようにすることだ。企業の役員会でM&Aなどの意思決定をする時、相手の会社と利害関係がある当事者は投票できない。それと同じく、今のロシアのように安保理常任理事国が紛争や人権問題などの当事者になった場合は、拒否権を取り上げるか、討議に参加することができないようにするのだ。
もう1つは、常任理事国が1国でも拒否権を行使すれば決議が否決されるという現在のルールを撤廃し、たとえば理事国の3分の2(15か国のうち10か国)以上の賛成で可決されるようにすることだ。ちなみに、ロシアの即時撤退を求める決議案には11か国が賛成した。
しかし結局、そうした改革も、常任理事国のロシアや中国が拒否権を行使したら、永遠に実現不可能だ。国連が発足した時の加盟国は51だったが、現在は193になっている。安保理が国連の図体に比例して大きくなっていないことにも矛盾が現われている。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館刊)等、著書多数。
※週刊ポスト2022年5月20日号