そうした事態に備えて、手続きの負担軽減のための措置が必要だと考えられるが、遅々として進んでいないことに藤井氏は危機感を募らせる。
「人の生死を軽々に判断すべきではないが、生きているはずのない人についてまで失踪宣告の手続を強いるのは、『所有者が行方不明の土地』を利活用したい国・地方自治体など、そして利害関係人(申し立てをする親族ら)に過大な負担を背負わせることになります。
120歳を超える人を亡くなっていると見なす手続きの簡略化は急務でしょう。現状でも、120歳以上で現住所不明なら、自治体の職権での戸籍消除が可能です。それをもって法的に死亡とみなすという法改正をするだけでも関係者の負担がかなり削減されますが、明治以来の失踪宣告制度の問題点が放置されているのです。国や地方自治体にも失踪宣告の申立人資格を認めるなど利害関係人の枠を広げることも必要不可欠と考えます」
トラブル急増という事態を防ぐために何が必要か。議論を急がなくてはならない。
※週刊ポスト2022年5月27日号