禁じられるのは、【1】優越的な関係を背景とした言動で【2】業務上必要かつ相当な範囲を超えており、その結果【3】労働者の就業環境が害されるという3要件が備わっている行為です。ミスを繰り返す部下への注意は、【1】の条件を充足します。暴力など有形力の行使は、【2】と【3】も充足します。口頭注意でも人格否定的な言動や他の人の前で大声を出して威嚇的に叱責すれば、職場環境も悪化し、パワハラです。
しかし、「社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意」「その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行なった労働者に対して、一定程度強く注意」は該当しません(厚労省ホームページより)。
職場環境をよくしようとの姿勢で業務上、必要な注意をすることを委縮してはいけません。ただし、人格を傷つける言動は厳禁。
また、注意の真意が伝わらないと意味がないので、十分なコミュニケーションを取ることも不可欠です。説明方法、タイミングの工夫などの努力をすべきでしょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2022年6月10・17日号