■「100年に一度の金融危機」を前にすべてが裏目に
ポンドは翌日以降もじりじり下がり続け、そして1か月後、2007年8月に、あの「サブプライム・ショック」が世界経済を直撃したのです。
世界経済についてろくに知らないままFXをやっていた僕が言うのもなんですが、サブプライム・ショックとは、アメリカの低所得者向け住宅ローン(サブプライム・ローン)の焦げ付きに端を発した世界的な金融不安です。
世界同時株安に加えて急速な円高が進行し、それまで1ドル=120円を超えて推移していた米ドルは1ドル=約110円に。
僕のポンドちゃんにいたっては、1ポンド=220円と、実に1か月前の最高値(1ポンド=250円超)と比べれば、30円も円高になってしまったのです。
これだけ円高に動いたわけですから、外貨の買いポジション一点張りだった僕の資産はみるみる下落していきました。それはもう、暴落する世界の株式市場の下げ幅をはるかに上回る勢いだったのではないでしょうか。
抵抗しようと必死に取引を重ねてもすべて裏目に出てしまうし、かといって放っておいてもどんどん目減りしていきます。
7月には10億円あったはずの証拠金が、9月には3000万円にまで減ってしまいました。結局、フタを開ければ、この年前半の絶好調期の利益はすべて吹っ飛んで、2007年には年間ベースで3億2000万円もの損失を計上してしまったのです。
さらに翌2008年9月には、サブプライム・ショックで経営が行き詰ったリーマン・ブラザーズが経営破綻し、「100年に一度の金融危機」の引き金を引きました。
欧米諸国の中央銀行は、景気の減速を食い止めるためすでに前年から利下げに踏み切っていましたが、さらなる利下げを求められるようになりました。
そうなると、「何もしないでもスワップポイントでボロ儲け」などという甘い考えは、もはや通用しません。加えて、相対的な価値が高まった日本円は外貨に対してグングン上昇。
日本のFX投資家を支えていた「円安」と「外貨の高金利」という2本の柱が、一気に崩壊してしまったのです。