ムダ遣いしない人とケチな守銭奴は違う
では、投資でお金を増やすのはどうか。少なくとも、動いている分、死蔵ではないはずだ。明治大学大学院元教授で行動経済学者の友野典男さんが言う。
「“投資先の企業を応援したい”“増やしたお金で家族で暮らす家を買いたい”など、その先に目的があるなら、投資は“生き金”につながるでしょう。しかし、ただお金を増やすことだけを目的にしてしまうと、ゴールがない。幸せには到達できません」(友野さん)
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、さまざまな「お金とのつきあい方」を見てきた。
「節約に節約を重ねて、定期預金で2000万円貯めた人と、資産運用や自己投資をしながら2000万円を貯めた人では、幸福度には大きな違いがあります。そもそも、年金の受給額が減り続けているいま、2000万円では足りないことも多い。仮に月に10万円ずつ取り崩していくと、16年8か月で底をつきます。65才からだと、80才でお金がなくなる。
そのとき、2000万円という金額をゴールにただ貯めてきた人と、自己投資のスキルが身についている人では、お金が減ったときの考え方や対処法に雲泥の差が出るのです」(黒田さん・以下同)
もちろん、備えは絶対に必要だ。黒田さんは、生活費の半年~1年分ほど、自分や家族の有事に備えた預貯金を確保した上で、それ以外の資金は生活を豊かにするために使ったり、資産運用で増やすのがよいと説く。
「ムダ遣いをせずに備えている人と、ただケチなだけの守銭奴は違います。日本人は、自分のお金は1円たりとも損したくない、他人なんかのために使いたくない、もらえるお金はすべてもらいたい……という人ばかり。そうして貯め込むばかりでは、“生き金”とは言えません。多少のリスクを取ってでも資産運用をして知識をつけたり、自分や誰かのために有効なお金の使い方をすることで経済が回ります」
「自分が使ったお金がどこに行って、どんな価値が、どうやって返ってくるのか」を考えれば、ムダ遣いも減り、正しいお金の使い方や節約も自然と身につくはずだ。
過度のもったいない精神で、ただ貯蓄するだけでは結局、安心した老後からも幸福からも、遠ざかってしまう。