もう1つの目玉は、岸田首相肝入りの「一億総株主」だ。自民党の経済成長戦略本部が、岸田首相の掲げる「新しい資本主義」に関する提言書の中で打ち出した。「貯蓄から投資へ」をスローガンに、ただ銀行に預けるのではなく、投資信託などで資産形成を促すものだが、同志社大学大学院教授で経済学者の浜矩子さんは「公助をしないかわりに、自助で資産を増やせということ」と語る。
「生活防衛のために貯めている資産をリスキーな投資に回せ、と国が促すのは、無責任を通り越して罪深い」(浜さん)
そもそも、投資に回せるだけの余裕がない人だって多いはずだ。「国は国民のお金の面倒を見られなくなったから、自分でなんとかしてください。あわよくば、国の経済を回すためにお金を使ってほしい」と、涼しい顔で提案しているようなものだ。明治大学教授で経済学者の飯田泰之さんは、こう説明する。
「経済学では、銀行に預けようと、投資信託を買おうと“使わないお金”すなわち動きがないお金のことはすべて『貯蓄』といいます。逆にいえば、銀行にお金を貸してその利益(利子)を受け取っているのですから、預金もりっぱな投資です。銀行は、預かったお金を企業に投資しています。預け先が異なるだけで、預貯金も株も貯蓄であり、投資でもある。したがって、『一億総株主』は、毒にも薬にもなりません」
はたしてこれらの政策が、国民にどう判断されるのか──。
※女性セブン2022年7月7・14日号