「年金生活者の受給額を引き下げると、生存権が脅かされる。だから年金の直接減額はタブーでした。例外は、物価の上下に応じて年金額を調整する物価スライド制度ですが、これは受給額は変わっても同じものが買えるので高齢者の生活が苦しくなることはない。
しかし、今回の改正案では、物価が上がっても下がっても現役サラリーマンの平均賃金が下がれば年金生活者の受給額をマイナス・スライドさせるという制度に変わる。
“賃金減少で現役世代の生活が苦しいから、お爺ちゃんおばあちゃんも我慢してください”という趣旨ですが、現役世代は給料が下がれば残業を頑張ったり、パートを増やすなど収入を増やす努力ができるけれども、年金に頼っている高齢者には無理です。
サッカーの試合途中で一方のゴールを大きくするようなやり方で、政府はいよいよ年金生活者が現在受け取っている年金を召し上げるという禁じ手に踏み込んだ」
※週刊ポスト2016年11月4日号