「年金積立金はいわば国民のカネであり、不正会計による株価急落で損失を受けた企業に損害賠償を請求することに問題はない。
しかし、GPIFは個別企業の決算を見て“この株は上がる”と判断して買う運用をしているわけではなく、資金運用を信託銀行に委託して日経平均やTOPIXといったインデックス(株式指標)に合わせた銘柄を選ぶパッシブ運用などをさせている。
そうした運用の場合では、不正会計などによる株価下落のリスクがあることも織り込んでいるはずですから、損失を東芝やVWの責任と叫ぶのは強引すぎる。目立つように訴訟を連発しているのは、運用失敗を企業に責任転嫁するためのアピールに見えます」
株式運用のプロの間では、「GPIFが大損した株式市場の混乱はチャイナショックの影響が大きい。東芝やVWのせいにするより、中国政府に損害賠償を求めた方が筋が通っている」と笑われている。
それが、大切な年金を預かる“世界最弱の機関投資家”の実態なのだ。
※週刊ポスト2016年11月4日号