さらに家裁での調停を利用する際の条件も難しさに拍車をかける。弁護士を立てて家裁に申し立てなければならないが、「特別寄与料」に関しては期限が被相続人の死後6か月以内と短い。
「まずは当事者同士で協議しますから、1~2か月後には相続人である義理の兄弟らに『特別寄与を請求します』と言わなければなりません。そこで『払わない』と言われたら、家裁に申し立てをする流れです。相手に『ちょっと考える』とか『まだ亡くなって日が浅い』などと返事を引き延ばされたら、半年はあっという間に過ぎるでしょう。特別の寄与の制度ができた時は、『お嫁さんの介護が報われるめちゃくちゃいい制度』と思いましたが、現実的ではなかった」(米田氏)
それでも認めさせる可能性を上げるには、「介護日誌」がものを言う。山下江法律事務所の加藤泰弁護士が解説する。
「介護日誌を残しておくのは必須と言えます。徘徊や排泄などのトラブルをできるだけ詳細に記録しておくのがコツです。どれだけ介護をしてきたかがきちんと伝われば、感謝の気持ちが芽生えて話し合いがスムーズに運ぶかもしれません」
相続人でなくとも「介護をした人」に厚く報いようとする制度自体に問題はないが、現実はそう甘くないようだ。やはり、来たる日に備えた対策が何より重要となる。
※週刊ポスト2022年7月8・15日号