「年金生活者世帯の家計は今も赤字で、年金では足りずに預貯金を取り崩しながら生活している方が多い。
それでも今は60代はリタイア後に夫婦で旅行、70代はガーデニングなどの趣味にお金を使う人が多いが、年金が減っていくとなると、自分たちの娯楽費や交際費はできるだけ使わないというマインドになる。
その先は生活を切り詰める。まず食費を抑え、外食はしない。孫への小遣いは減らしたくないから、新聞をやめる人も増えるでしょう。服や家具、耐久消費財は新しく買いません。預貯金でどれだけ食いつなげるかをシビアに考える」
総務省の家計調査(2015年)からもそれがわかる。夫65歳以上、妻60歳以上の年金生活世帯(無職世帯)の家計は生活費が月約27万5000円かかり、年金などの収入では足りずに毎月約6万円を貯蓄から取り崩している。ただでさえ消費税増税前(2012年)に較べて支出は税金・保険料(3万2000円)や食費(6万2000円)、携帯電話などの交通・通信費(2万7000円)が増えており、その分、交際費や家事用品などの支出を抑えている。
そこに加えて年間14万円も収入が減少すれば、新たに保健医療費分(月額1万5000円)に相当する金額を捻出しなければならない。
比較的資産を持つ現在の高齢者世代の消費が落ち込むと、デフレは解消せず、賃金も下がる。その結果、年金額の引き下げに拍車がかかるという悪循環が生まれる。