参議院選挙の投開票日を2日後に控えた7月8日、安倍晋三元首相が選挙応援に入っていた奈良市で背後から男に撃たれ、心肺停止の状態となった。8日の日経平均株価は前場を前日比379円高で終えていたが、この一報を受けて先物が売られ、後場から上げ幅を縮小。最終的には落ち着きを取り戻し、前日比26円高の2万6517円で引けた。
市場関係者は次のように分析する。
「これまでアベノミクスの恩恵を受けてきた投資家が多いことから、一報のショックで瞬間的な売りは出たが、早々に売りは一巡したようだ。この先、自民党内のパワーバランスが変わることはあるかもしれないが、参院選はただでさえ自民党優勢と見られてきた中、“同情票”が上積みされて自民党政権が盤石になるという見方も出ている。元々、参院選の結果次第で政権が不安定化すれば政治リスクが浮上する懸念も指摘されていたが、それも遠のき、政治も経済運営も従来と変わらない形で進むのではないか」(以下同)
それでは参院選で自民党政権が盤石になった場合、政治リスクの後退で株価上昇が見込めるのか。
「そう単純な話ではないだろう。日本株は売買代金の6~7割を占める外国人投資家の動向次第であり、彼らが最も気にしているのは米FRB(連邦準備制度理事会)の動き。利上げによって世界的なインフレの抑制を実現するのか、それとも景気が減速するかを注視している。
足元を見ると懸念された米長期金利の上昇はピークアウトし、原油をはじめとする商品価格も下落に転じている。インフレリスクは相当後退しているという見方が広まり、それが目下の株高要因となっているのは間違いない。ただ、日経平均はいまだ下落トレンドの最中にあり、当面は“ベアマーケットラリー”(弱気相場での一時的な上昇)にとどまる可能性が高いと見ている」
FRBが利上げに踏み切った3月以降の「円安」基調にも大きな変化は考えにくいという。
「FRBをはじめ世界の主要な中央銀行が利上げに踏み切る中、日銀だけが金融緩和を転換することができず、内外の金利差を考えても、当面は円安トレンドが変化することはないだろう。
7月23日に日銀の審議委員が2人交代して、積極的な金融緩和論者であるリフレ派の審議委員が交代するとはいえ、黒田東彦総裁の任期である来年4月までは日銀が金融緩和の旗を降ろすとは考えにくい。よくも悪くも政府、日銀ともに現行の体制が続く以上、株価も為替も大きな変化は考えにくいというのが現実的な見方ではないか」