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『鎌倉殿の13人』源頼朝亡き後、比企氏との内戦を短期で終わらせた北条時政の手腕

 能員はどうして謀略を見抜けなかったかと不思議に思われるかもしれないが、この点については、本郷和人著『北条氏の時代』(文春新書)にある以下の記述が興味深い。

〈時政は、頼朝時代にはそこまで重用されていない人物でした。誰にでも愛想よくへりくだっていて、陰謀などを巡らせるような人間だとは誰も思っていなかった可能性もあります。もし、そうだとすれば大変な腹芸の持ち主だったといえるでしょう〉

 この推測が正しければ、今大河ドラマにおける北条時政(坂東彌十郎)はまさに適役と言って間違いないだろう。

 経済的にも、北条・比企氏間の内戦はできるだけ短期で、一方的な展開で終わるのが望ましかった。双方が大動員をかけ、長期戦にでもなれば、地方と鎌倉間の物資の輸送が途絶するだけでなく、鎌倉全体が焦土と化しかねない。共倒れを避けるためには、勝者が一手に汚名を引き受ける必要があり、時政はみごとその役目を果たしたのだった。

【プロフィール】
島崎晋(しまざき・すすむ)/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)など著書多数。近著に『鎌倉殿と呪術 怨霊と怪異の幕府成立史』(ワニブックス)、最新刊に『ロシアの歴史 この大国は何を望んでいるのか?』(じっぴコンパクト新書)がある。

 

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