2022年に入って以降、金融市場は激変した。絶好調だった米国株式市場は下落に転じ、約半年たった今も下値を切り下げている。また、為替市場では円が暴落し、まったく下げ止まる気配を見せない。そうした中、活況を呈している投資がある。FX(外国為替証拠金取引)だ。為替相場の値動きが激しくなるほど、FXのチャンスは拡大する。そこで、今後の為替相場の見通しとともに、FXの仕組みやメリットについて基本から解説しよう。
為替相場は実質的に50年ぶりの円安水準に
円の暴落が始まったのは3月中旬。1ドル=115円台だった円レートは、一本調子で4月下旬には130円台へ下落。その後、6月21日には136円台と、1998年10月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準となった。
さらに、「通貨の実力」を表す「実質実効為替レート」をみると、円安の中身はもっと深刻だ。実質実効為替レートは、外国為替の対象となるすべての通貨に対して、貿易額などで為替レートを加重平均したもので、国際決済銀行の統計では、4月の円の数値は60.91。これは、1971年8月以来の約51年ぶりの低水準にあたる。
なお、国際決済銀行は60か国のレートを公表しており、日本は59位。最下位は、現在、前年比70%以上のインフレが進行するトルコ・リラである。円は“最弱”の通貨になりつつあるのだ。
インフレ懸念から金利上昇円安は当面続く見通し
足元の円安の主因は、海外の主要国との金融政策の違いにある。米連邦準備理事会(FRB)は、2021年11月から金融の引き締めを開始し、今年に入ってすでに3回の利上げを実施。欧州中央銀行(ECB)も7月からの利上げを示唆している。一方、日銀は、現在のゼロ金利を始めとする大規模な金融緩和の継続を表明。欧米と日本の金利差の拡大傾向が強まりつつある。
特にFRBは、沈静化の兆しが見えないインフレを抑え込むために、今年中にあと3~4回、率にして合計1.75%の利上げを予定していると見られている。日銀が金融政策の変更をする可能性は低く、ますます日米間の金利は拡大することになろう。今後の見通しについて、為替市場では、「1ドル=140円は通過点で150円突破の可能性もある」という見方が強まっている。
FXの取引高が急増1か月で1000兆円を突破
こうした中、取引が急増しているのがFXだ。円とドルなど2国間の通貨を交換して、交換レートの変動から生じる「差益」を狙う投資といえる。例えば、1ドル=130円のときにドルを買っておいて、1ドル=135円になったときに「ドル売り・円買い」をすれば、5円の利益(=差益)が得られることになる。為替相場が変動すればするほど、差益が得られるチャンスは大きくなる。
実際の取引高を見ると、4月の月間合計額は1002兆円に上った。これは過去2番目の大きさである。また、年間で最も取引高が大きかった2020年と比べると、2022年は5月までの実績で50%増となっている。為替相場の乱高下は当面続くと予想されることから、2022年は年間で過去最高額となる可能性が高い。目ざとい投資家はチャンスを逃さない、ということだろう。
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※週刊ポスト2022年8月5・12日号