社内にいなければ「出ているので連絡がつきません」
営業活動はどうだったのだろうか。メーカーに勤めていた70代男性・Bさんが、減益時代の営業活動を振り返る。
「取引先から会社に電話がかかってき時、私が社内にいなければ、事務の女性が『出ているので連絡がつきません』と説明すればいい時代でした。出先からは、定期的に公衆電話や喫茶店から会社に電話をかけて、何か連絡や伝言がないか、確認するスタイル。『今、〇〇社を出たところ。電話あった?』みたいな感じです。デスクの引き出しに電話用の小銭を貯めていた人も多かったと記憶しています。今はスマホ1つで何でもできる時代で、羨ましい部分もありますが、束縛されない分、昔の方が気楽だったともいえますね」(Bさん)
真面目に仕事をしている人もいれば、営業活動と称してサボる営業も多かったという。Bさん自身は、どちらかというと「真面目な方だった」ので驚いたという。
「業務時間内でパチンコとサウナに通う人は本当に多くて、もしバレても『営業の合間に時間があったから』と言えば大丈夫だと、先輩から教わりました。当時の上司も『息抜きは大事だから』と言って、部下を連れて海に行くような人でした。『今日は暑いから仕事にならん』と言ったかと思えば、“新規開拓”と称し、湘南の海に何回か連れていかれましたね(笑)。そのまま帰社せず直帰することもあれば、会社に戻って残業したことも。今では考えられない話だとは思いますが、私がいた会社の営業マンの日常でした」(Bさん)
日本企業で活躍する社員の特徴として、今も“体育会系”社員が注目されることがあるが、PCもスマホもない時代は、その傾向がより顕著だったという。
「基本的にこの時代の営業は、声が大きくて話好き、体力があって要領が良い、みたいな人が多く活躍していました。私が働いていた会社も、体育会系が当たり前で『何部だったか?』とよく聞かれました。それに、今のようにPCがあるわけでもないので、営業に事務スキルが求められることはないし、面倒な書類の手書き作業は事務の女性の担当でしたから、極端な話、能力よりもガッツがあれば通用する時代でした」(Bさん)
PCやスマホがない時代の働き方は、今とは大きく異なる面があったようだ。