最先端技術を継承した基本構造
目の前に登場した新型フェアレディZは、とても新鮮に見えました。初代モデルに対するリスペクトによって仕上げたと言われるボディデザインですが、清々しいほどに新鮮ですっきりとした佇まいなのです。もちろんロングノーズとサイドウインドーの形と、ストンと切り落とされたようなショートデッキという基本フォルムのバランスは、歴代のフェアレディZに受け継がれてきたデザイン上のDNAを感じさせてくれます。オーソドックスで“カッコいいスポーツカーってこれだよね”というデザインは、やはり魅力的です。
そんな形を受け入れながらホールド性のいいシートの体を納め、走り出しました。最初にスペックを見たとき、想像したパフォーマンスがそこにありました。なにひとつ期待を裏切ることがない仕上がり具合であり、ワインディングでも乗り心地と、スポーツカーらしいキレの良さを両立させたバランスの良さを見せるのです。
エンジンによる独特の加速感によって、どんな速度域でもスポーツカーだけが持つフィット感と優れた乗り心地を存分に味わえるのです。あのスタートから一気呵成に新幹線のように速度をグングン上昇させるBEVの感覚とも違います。どこか懐かしく、体の片隅にしっかりと記憶されているエンジンの加速感は相変わらず心地よかったのです。ノスタルジーで言っているのではなく、多分これが同じエンジン搭載で圧倒的なパワーによって加速するGT-Rとも違う、フェアレディZ本来の立ち位置なのだと、理解できました。
そして次の瞬間、もしこれほどの熟成した内容が“新開発のシャシに与えられていたら?”と、考えてしまいました。想像に過ぎませんが、いま以上に魅力的な内容になっていたかもしれません。一方で、もしすべてが新開発であったなら、これだけのバーゲンプライスとも言える価格を実現できたでしょうか? 新車開発には多くの資金がかかるのですが、基本部分をより熟成させ、進化させる手法はむしろユーザーにとっては有り難いことだったわけです。
総合力を評価するとやはり“お買い得”
こうした決断によって熟成を進めたパフォーマンスを手に入れた新型は、ベーシックなモデルで車両本体価格524万1500円(AT/MTとも)です。最上級グレードのバージョンSTでも646万2500円(AT/MTとも)なのです。別にエンジンの出力と排気量で優劣をつけるわけではありませんが3Lツインターボエンジン、最高出力は405psというスペックがこの値段で入手できるのは、やはりお買い得と言えるのではないでしょうか。
たとえば国産のライバルの筆頭にくるトヨタ・スープラの最上級グレードRZは3L直列6気筒エンジンで387馬力、価格は731万3000円です。さらに輸入車のライバル、ポルシェの718ケイマンで400馬力を望むなら、4Lの水平対向6気筒エンジンを積んだ1152万円のGTS4.0を手に入れる必要があります。