もちろんスポーツカーの味というのは、馬力やエンジン排気量などだけで決まるほど単純ではありません。すべての要素を複合的に組み合わせたトータルバランスによって実現した走りが、どうであるかが重要なのです。その点に注目して言えば、ここまでパフォーマンスを仕上げたからこその、あの楽しさ、この価格満足度はやはり魅力的なのです。
コロナ禍の前、初代フェアレディZのデザイナーである故・松尾良彦さん(2020年ご逝去)と何度となくお会いしながら、開発時のお話をお聞きしていました。その中で、1960年代に開発中のフェアレディZでアメリカを走行中、警官に職質を受けたエピソードがありました。いろいろと警察官に質問を受け、なんとか放免になるとき「これほど高性能の車を、そんなに安く売ると言うなら必ず買うよ」と言われたとのこと。当時とすれば同程度の実力を持った欧州スポーツカーの半額近い値段だったそうです。そして実際にアメリカで発売すると、在庫を巡ってディーラ同士が奪い合いになるほどの大ヒット。もちろん最新の7代目フェアレディZも、お買い得というDNAも引き継いでいると考えていいでしょう。
【日産フェアレディZ】
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,380×1,845×1,315mm
車重:1,590kg
駆動方式:FR
トランスミッション:7速AT
エンジン:水冷V型6直列DOHCターボ 2,997cc
最高出力:298kw(405PS)/6,400rpm
最大トルク:475Nm(48.4kgf・m)/1,600~5,600rpm
燃費:9.5km/L(WLTCモード)
車両本体価格:6,462,500円~(バージョンST・MT&ATとも/税込み)
【プロフィール】
佐藤篤司(さとう・あつし)/自動車ライター。男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書『クルマ界歴史の証人』(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。