「こんなに返済が大変とは知らなかった」
大学によっては、独自の奨学金制度を設けているケースもあります。
例えば青山学院大学では、給付型として年間学費相当額を限度として給付される「経済支援給付奨学金」や、1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)以外の出身者で優秀であるにもかかわらず経済的理由で進学が困難な学生に対して年額50万円×4年間支給する「入学前予約型給付奨学金『地の塩、世の光奨学金』」などがあります。
学習院大学でも同様に、1都3県以外から入学する優秀な学生で、経済的支援が必要な学生に対して初年度100万円給付する「入学前予約型給付奨学金『目白の杜奨学金』」や、年間50万円を4年間給付する「学習院桜友会ふるさと給付奨学金」を設けています。
進学先を選ぶ際には、こうした奨学金制度をあらかじめ調べておくのが重要です。
企業が奨学金を設けている場合もあります。例えば、FA(ファクトリーオートメーション)用センサー大手のキーエンスの奨学金(同社設立のキーエンス財団が給付)では、月額8万円がもらえます。学業成績、経済的な状況、小論文等を基に総合的に選考されるもので、募集人数は500人前後(2023年4月大学入学予定者)です。
他にも、卒業後に就職し、条件を満たすことで返還不要となる奨学金もあります。福井県が設けている「福井県ものづくり人材育成修学資金」(月額6万円の貸与)は、理工系大学院の学生を対象としたもので、県内の「ものづくり企業」に7年間勤務すると返還免除となります。
奨学金を利用するには、何よりも学生本人が自覚を持つことが重要です。給付型を利用するためには、選考や審査を突破しなければなりません。一方、貸与型はいうまでもなく“借金”です。大卒の初任給は平均で約22.5万円、健康保険料や所得税などを引いた手取りは約18万円というなかで、毎月1万~3万円前後の返済を続けていくのは容易ではありません。
奨学金返済中の方に話を聞くと、「こんなに返済が大変とは知らなかった……」と嘆いているケースもあります。貸与を受けるのであれば、大学卒業後の将来設計まで考えておかなければ、返済に苦しむことになりかねません。利用する前に、「借金をして大学に行く」という意味を、親子できちんと話し合って、意識を共有しておくことが大切だと言えるでしょう。
【プロフィール】
清水斐(しみず・あや)/CFP、1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、証券外務員I種。30歳でファイナンシャルプランナーとして独立、FP事務所「f-design」を開業し、長野・東京で活動中。主に30~40代の「普通のくらし」を求めている方への「自分がお客様の立場だったらどういう判断をするか」を軸にお金の持ち方・つかい方のアドバイスに力を入れている。ライフプラン作りから資産運用まで老後にわたる継続的なサポートすることを事業理念として活動している(http://www.fp-saku.com/)。