急激に進む物価高騰は、家計に大きな影響を与えている。子供の教育資金の確保に苦労している家庭もあるだろう。そうした場合、奨学金制度の利用が選択肢となる。奨学金には「貸与型」と「給付型」があり、給付型は制度が充実しつつあるが、依然としてハードルが高いのが現実だ。奨学金をめぐる現状と注意点について、ファイナンシャルプランナーの清水斐氏が解説する。
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最近、「物価高で支出が大きく増えてしまった」という方からの相談が増加してきました。日常生活ではセールや特売を活用するなど節約している人も多くいると思いますが、なかなか削ることができないのが、子供の大学進学のための入学金や授業料といった「教育資金」でしょう。まとまった金額になる上に、行きたい学校が決まっているのであれば“節約”することは難しいのが実情です。
その場合に有力な選択肢として活用したいのが、奨学金制度です。日本学生支援機構の「令和2年度学生生活調査結果」によると、何らかの奨学金を利用している学生の割合は、大学(昼間部)49.6%、短大(昼間部)56.9%となっています。約半数の学生が奨学金を利用しているという状況で、どちらの数字も前回調査(平成30年度)と比べて増加しています。
では、奨学金にはどのような種類があるのでしょうか。最も一般的なのが、日本学生支援機構が運営している奨学金制度です。返済が必要な「貸与奨学金」と、返済不要の「給付奨学金」があります。
給付型は2020年から世帯収入などの給付要件が緩和されました。かつては住民税非課税世帯(扶養する妻1人子供2人の場合、世帯年収の目安が約271万円=第I区分)の学生のみが受給できましたが、現在はそれに「準ずる世帯」(同、世帯年収の目安が約303万円=第II区分、世帯年収の目安が約378万円=第III区分)も受給できるようになったのです。
給付金額は、住民税非課税世帯の学生が私立大学に自宅外通学する(1人暮らしなど)ケースで月額7万5800円、自宅通学なら月額3万8300円。同様に、国立大学に自宅外通学するケースは月額6万6700円、自宅通学なら月額2万9200円となっています。
住民税非課税世帯に「準ずる世帯」の学生の場合は、第II区分の場合ざっと3分の2の金額、第III区分の場合はざっと3分の1の金額が給付されます。大学によって異なりますが、給付型奨学金の対象となる学生は、申し込むことで授業料・入学金の免除・減額も受けられます。
日本学生支援機構のサイトにあるシミュレーターでは、それぞれの家庭の収入が基準に該当するかおおよその確認ができるので、まずそれを試してみることをお勧めします。