翌日、年金事務所を訪ねて年金支給額を計算してもらった。年金オンラインの端末は、厚生年金加入期間41年間(492か月)で年金見込額を約210万円(年額)とはじき出した。ところが、10月になって届いた厚労大臣の年金決定通知書を開くと、加入期間433か月で支給額が約185万円と書かれている。25万円も少ない。
S氏は何度も年金事務所に足を運んで説明を求めたものの、厚労省と違うシステムのオンライン端末を使っている年金事務所では何度入力しても25万円多い数字(正確な算出額)が表示されるから、年金事務所の窓口担当者たちも困惑した。
4年11か月分が消された
原因は年金決定額を計算するコンピューターの“プログラムミス”だった。厚生年金は65歳までは特別支給という制度で、働きながら受け取る在職老齢年金は60歳までの加入期間で年金額が決定される。退職後に、改めて計算が行なわれ、60歳以降の加入期間を加えた満額の年金額になる。
年金決定額を計算するコンピューターは「64歳10か月」までに退職した人には満額が計算されるが、「64歳11か月」で退職したケースだけ60歳以降の5年分の加入期間を除いた金額が算出されていた。
年額25万円の差は大きいが、低い年金額が支給されるのは65歳になる月の1か月分だからS氏の実害は約2万円だった。ややこしいことに、65歳以降は年金額が再々計算されて満額が支給される。それにしても年金算出に2つのシステムを並行して使用していたとは開いた口が塞がらない。