内閣府の国葬儀事務局の担当者は、2年前に営まれた中曽根康弘・元首相の「内閣・自民党合同葬」の費用が約2億円(国と自民党が折半負担)だったことを引き合いに、「それが一つのメルクマールとなって検討されている」と説明。その後、今年度予算の予備費から「2.5億円」が支出されることとなった。
たったの2.5億円。世界中からVIPが参列する国葬がそんな金額で収まるはずがない。
『週刊ポスト』は過去のデータや専門家の検証をもとに、「本当の費用」を試算した。
菊の花だけで1600万円
まず中曽根氏の合同葬の費用「2億円」の内訳を検証したい。
合同葬は東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で営まれた。ホールには中曽根氏に追贈された「従一位に叙す」という天皇の玉璽が押された位記や数々の勲章が飾られた。会場代が約5500万円、式典の際の音響、映像、設営費用が約1億3600万円と報じられている。
これらが参考になるが、中曽根氏の合同葬はコロナ下で行なわれたため、参列者は約1400人と縮小された経緯がある。
吉田氏の国葬は今回と同じ日本武道館で行なわれた。『故吉田茂国葬儀記録』によると、場内には縦約6メートル、横約4メートルの巨大な遺影が搬入され、赤いカーネーション1800本と白菊3000本で日の丸の国旗が造られた。それとは別に式壇周りに5万本、献花に3万本という大量の大輪菊が使われた。
前例を踏襲して8万本の菊の花を用意すれば、花代だけで少なくとも1600万円にのぼる。
武道館の使用料は、「全国戦没者追悼式」のケース(2021年)で約1200万円と中曽根氏のケースより安価なので、葬儀自体は2億円付近が妥当に思える。だが、これには重要な費用が含まれていない。「警備費」である。
各国のVIPが参列するため、会場周辺だけでなく、空港や滞在先まで厳重な警備体制が敷かれる。ましてや安倍氏銃撃事件で警備の不備が指摘されているだけに、アクシデントが起これば日本の警察の沽券に関わる。
内閣府の担当者も野党合同ヒアリングで、「2億円弱というのは式典にかかる費用で、警備などで警察当局がどのように経費を手当てしたのかは現段階では把握していない」と認めている。この費用が莫大なのだ。