投資

かつての「タコ足配当」と何が違う? 再び脚光集める「毎月分配型投信」の新潮流

“ひとり勝ち”の投信とは

 新しいタイプの毎月決算型投信のなかで「ひとり勝ち」(深野氏)とも言える人気商品が、米アライアンス・バーンスタインの「米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」だ。純資産総額は2兆円に迫る。

「この商品の場合、基準価額(1万口あたり)が1万1000円未満だと原則として分配金が支払われません。1万1000円以上になると、1万2000円未満なら1万口あたり200円、1万3000円未満だと同300円といった具合に、基準価額に応じて分配金が決まる仕組みです」(深野氏)

 8月23日時点の同商品の基準価額は1万1141円となっている。

「つまり、100万口購入して手数料を含め約115万円を投資した人は月2万円の分配金がある。約230万円で200万口の投資をしていれば月4万円。投資対象の米国株が伸びれば分配金はさらに増えるし、逆に下がればゼロになる」(深野氏)

 この数年、米国経済が好調だったため、同商品は2020年5月から今年2月まで22か月連続で分配金が出ていた。アライアンス・バーンスタインの担当者はこう説明する。

「米国株のなかでも持続的な成長力を持つ銘柄に厳選投資することで、長期的にいいパフォーマンスをあげられています。また、しっかり利益が出ている時に分配金を出す仕組みとしていることも、評価していただいているのだと思います」

 こうした毎月の「おこづかい」がある投信の購入に際しては「きちんと特性を理解することが重要」と深野氏は強調する。

「現役世代が老後に備える投資には不向きです。1か月ごとに分配金が支払われるので、収益が元本に回って資産が増える『複利効果』が得られない。また、分配金は受け取るたびに約20%の税金がかかる。そして、新しいタイプの毎月決算型でも、運用がうまくいかなければ分配金がゼロのうえに、元本が減っていくというリスクがあります」

 金融庁も今年5月に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2022」で毎月決算型投信について、海外資産への投資リスクなどが〈十分な確認の上で提供される必要がある〉などと注意喚起している。

 そうした仕組みを理解して活用法を考えるのがよいと深野氏は言う。

「定年後に貯蓄の取り崩しに抵抗を感じる人は少なくありません。子供の教育費や住宅ローンでは抵抗がなくても、生活費だと罪悪感が生まれる。もちろん浪費はよくないが、必要なお金まで切り詰めては生活の質が下がってしまう。毎月決算型投信を“儲けるため”ではなく、“ストレスなく貯蓄を取り崩すため”というような意識で使うなら、悪くはないでしょう。

 たとえば115万円の投資で2万円の分配金が2か月に1回出れば、年12万円。税引き後は約9.5万円で投資額に対する利回りが8%くらい。そのくらいの水準でOK。間違っても多額の分配金を狙って500万円とか1000万円とか投資しないこと。下落時のリスクが大きすぎます」

 人気商品にも、十分な検討は必要なのだ。

※週刊ポスト2022年9月9日号

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