BEVの長距離ドライブ、最大の懸念事項
スタート地点の金沢から、bZ4Xの20インチタイヤを装着したFWDモデルで出発です。4WDよりは軽量のため、一充電当たりのカタログ値はギリギリ500kmを割っていません。乗り換え地点の松本市街までは約190km、4時間ほどの道のりで電欠の心配はなさそうです。搭載するリチウムイオンバッテリーの総電力量を71.4kWhより増やせばいいと考えますが、その分重くなります。充電にかかる時間も増えます。このバッテリー容量と重量の問題はまさに表裏一体であることはつねに考えることです。
前半の試乗ルートは一般道、それも山岳路を中心としたルートです。北陸道を富山まで走ったところで下道に下り、神通川沿いの国道41号線などで南下し、そして奥飛騨エリアを通過して、国道158号線を経て松本へと抜けます。BEVにとってはアップダウンがどう影響するかをチェックするわけです。
本来、エンジン車であれば高速を一定速で走り続ければ、燃費も良くなるものですが、BEVはちょっと違います。高速はブレーキ時や下り坂などで電気を取り戻せる「回生」があまり利用できません。少しオーバーですが電気を使うだけになります。一方、一般路では加減速で電気も使いますが、回生によって電気をバッテリーに取り戻す機会がぐんと増えます。これまでPHEV(プラグインハイブリッド)や日産アリアなどのBEVで経験しましたが、電動車は高速よりも一般路の方が燃費や電費が良くなる傾向にあるのです。ここでもエンジン車の走り方とは違った感覚を持たなければいけなくなります。
金沢駅前からの走り出しは実にスムーズにして静か。なにより2トン近い車重とBEVならではの低重心感が効いて、ゆっくりと走っているときにはフラット感がありました。BEVというと、まるで申し合わせたように「強烈なトルク感の鋭い加速」といった評価が多くなります。ですが、それほど尖った感覚ではなく、とてもナチュラルで優しい加速感というのが第一印象です。そこで速度を上げていると、路面の段差などを通過すると路面からのショックをそれなりに拾ってしまいます。高速を降り、一般道から山岳路に入っても走りの味は変わらず継続します。コーナリングでのフラットな乗り心地はいいのですが、BEVとして静かなせいでしょう、やはりロードノイズが少しですが気になってしまいました。
なおサスペンションの味つけはトヨタとスバルで、それぞれ専用チューニングを行っています。その印象の違いは、ソルテラを試してからにしましょう。
乗り換え地点の松本市街に入ったところでバッテリーの残量は50%少々。ここまでの186.9km走行で、平均電費は6.1km/kWhでした。バッテリー容量71.4kWhのほぼ半分を消費して約200kmを走りきりましたから、このペースなら松本から軽井沢までの残り100km少々のルートは問題なく走り切れる計算になります。ところが今回の試乗ミッションでは、ここですぐに乗り換えとはならず、つぎの試乗予定者のためにバッテリー充電量を約70%以上にしておかなければいけません。そこで急速充電器の登場となります。