箱根のワインディングに持ち出したのは3つあるグレードの中で、グランドツーリング的な性格の「GT」で、車両重量は1130kgです。軽自動車のワンボックス車が車重1トンあまりのボディで4人を乗せ、60馬力前後のエンジンをガンガン回しながら、実用に不足なく走っていることを考えると、A110の300馬力(ベーシックは252馬力)のエンジンは十分すぎるほどです。つまり性能はかなり高いということになります。ちなみにベーシックモデルは1110kg、サーキットでも使える「S」は1120kgですから、装備品の多いGTは一番重いグレードになります。
それでもボディを含む全体の約96%がアルミ製という軽量ボディ、ミッドシップレイアウトによって前後重量配分は理想に近い44対56、さらにサスペンションは前後ともにダブルウイッシュボーンという仕立ての良さで、走りはヒラリヒラリそのものだったのです。
体に張りつくようなフィット感を持つバケットシートも実に好ましい感覚です。少しばかりタイトな感じのするキャビンですが、スポーツカーですからむしろこちらの方がふさわしいとも感じます。
実際に走行すると…
早速、ワインディングに飛び出してみると、600馬力クラスのスーパースポーツのような強烈さはありません。一方で軽量ボディを活かした切れ味鋭くシャープに加速していくフィーリングが心地いいのです。大出力に任せた加速というより、軽さを武器にした軽々とした加速感は、軽量スポーツカーの大きな魅力になります。アクセルの踏み込み量にピタリと合わせるかのようにレスポンス良く加速していく感覚がなんとも気持ちいいのです。
さらにコーナリング時の遠心力も、車体が軽いことであまり強く感じることも少ないのです。車体の傾きも少なく、実にフラットな感じで安定しています。重量級のスポーツカーはこうした慣性力に対してタイヤを太くしたり、サスペンションを固めたりすることで対応するのですが、A110はその部分でも、独特のしなやかなサスペンションの味つけによって、路面にピタリと張りついたような「オンザレール感覚」の走りに仕上がっているのです。
すべてが軽さのなせる技、といったところかもしれません。終始、ドライバーの意志にピタリと寄り添うような走りは、まさに本来の「人馬一体感」です。気が付くと自然に笑顔になっていました。さらに軽さが効いて燃費はスポーツカーとしては驚きの14.1km/L(WLTCモード)という数字です。言ってみればSDGsにもつながっています。