安倍晋三・元首相の国葬が9月27日に執り行われるが、その国葬実施の決断に伴い、岸田内閣の支持率が急落している。「これまで岸田内閣の支持率がそこそこ高かったのは、何も決断しなかったから」と分析するのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。そのうえで「“何も決断しない”ということが、ビジネスシーンについても評価されるケースはよくある」と皮肉交じりに続ける。いったいどういう意味なのか。中川氏が、岸田文雄・首相のこれまでの発言を紐解きつつ、「何も決断しない上司」の方が出世する法則について考察する。
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岸田内閣の支持率が、急落しています。これまで岸田氏は、「聞く力」とか言いつつ何も決断しないことにより、社会に波風を立てないようにして支持率を維持してきました。それが、安倍晋三元首相の国葬実施を「決断」してからみるみるうちに支持率が下がっています。
9月11日に朝日新聞が発表した内閣支持率は41%で、前回8月調査の47%から下落し過去最低に並びました。不支持率は39%から47%となり、初めて「不支持」が「支持」を上回っています。なお、今年5月の同紙調査では、内閣発足以来最高となる59%を記録しています。
今回、岸田氏にしては珍しく国葬実施を「決断」したワケですが、その結果、「おいおい、また税金使うのか!」「おいおい、閣議決定で決めて国会通さないのか!」「自民党葬でいいだろう!」などといった批判が殺到。それが岸田内閣の支持率に跳ね返っている格好です。
これまで岸田氏は何か決断を迫られても、「検討する」と繰り返すばかりで、ネット上では「検討使」とも揶揄されていました。ところが、検討ばかりで現状を変えないことが、逆に支持率アップにつながっていた面もあるのでしょう。それが今回は、安倍氏の国葬を決断してしまったために支持率が下がるという皮肉が発生したのです。
ネット上では、決断を先延ばしにする岸田氏ならではのフレーズは「岸田話法」や「岸田構文」と呼ばれ、注目を集めています。
たとえば、家計に大きな影響を与える物価高騰について聞かれると「緊張感を持って対応」と答えます。これは意訳すると、「オレはヤバいと思っているから、状況を見ながら適切な対応をするから安心してね」という感じでしょう。でも、国民が一国のリーダーに期待しているのは、「生活必需品の値上がりは大きな問題なので、物価高騰を抑える具体的な方法を実施します」といった発言です。そこに「緊張感を持って対応」では、ちょっと他人事過ぎると感じてしまいます。