過去の戦争と現在の金融政策を同列に論じることに疑問を持つ読者もいるかもしれないが、あえて歴史を振り返れば、盧溝橋事件に始まった日中戦争は華北や上海、南京攻略でも終わらず、さらに奥地に入って泥沼化した。当初、日本軍は短期決戦で蒋介石の国民党政権に打撃を与えて講和を引き出す「対中一撃論」で臨んだが、国民党政権が屈服しなかったため、戦線が中国全土に拡大して長期戦を余儀なくされたのである。
今の日本も、安倍・黒田コンビで「国家総動員」ならぬ「政策総動員」のアベノミクスを展開したものの、的外れの政策ばかりだからほとんど効果が出ていない。
前述したように、黒田日銀は「2年で2%の物価上昇」という目標を未だに達成できず、ついには量的緩和から金利政策に切り替えて長期戦に突入した。異次元金融緩和の期間はすでに3年半を超え、太平洋戦争の3年9か月より長引くのは確実だ。しかし日銀は当時の大本営と同じく、自分たちの失策は一切認めていない。
※週刊ポスト2016年11月18日号