中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

マクドナルド値上げ 「59円バーガー」の思い出と「安さこそ正義」への違和感

自分なりに栄養のことを考えてレタスやベーコンを足してアレンジしたことも

自分なりに栄養のことを考えてレタスやベーコンを足してアレンジしたことも

このままでは「安いニッポン」が買い叩かれる

 消費者が安くていいものに慣れてしまうと、企業側も値上げを発表するのを恐れるようになります。だから、極力「値上げ」という言葉を使わずに済むように、値段はそのままの「ステルス値上げ」が相次ぐようになるのでしょう。

 とはいえ昨今、ウクライナ侵攻に伴う原油高・穀物高や円安進行で、原材料価格・輸送コストなどは増大するばかりです。そうしたなかで今までと同じ品質のものを同じ価格で提供し続けるのは、容易ではありません。

 今回のマクドナルドの値上げに限った話ではありませんが、相次ぐ値上げラッシュは、“日本では、サービスの質がとんでもなく高いのに無茶苦茶価格が安いのが当たり前”という空気感を覆すきっかけになるかもしれません。何せ、円安も相まって、今や外国人にとって日本は旅行や買い物をするのに最高の国になっているのですから。

 たしかに給料が上がらないなかで値上げが続くと、家計は苦しくなります。だからといって値上げをしなければ企業が苦しむし、そこで働く人たちの給料も上がっていかない。そうこうしていくうちに「安いニッポン」はどんどん海外勢に買い叩かれていく──。

 今や日本は、G7で唯一、この20年間給料が上がらない国になってしまった。そろそろ消費者も「安さこそ正義」から脱却し、企業の値上げを認める方向に転換しなければ、日本が本格的にまずい状況になることを理解した方がよいのではないでしょうか。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

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