新型コロナウイルスが世界的に蔓延した2020年3月以降、全国の飲食店やスーパー、コンビニ、公共施設では「非対面・非接触」を推進する動きが急速に広がった。そのひとつが「セルフレジ」の導入だ。利便性の向上や事業者の経費削減に一定の成果を上げているものの、利用者や従業員からの評判は必ずしも良いとは限らない。
「お前ら、俺をドロボー呼ばわりするのか! ふざけるな!」――声を荒らげる初老の男性と困惑する店員たち。コロナ禍でセルフレジの導入が広がり始めた昨年、都内に住む記者が近所のスーパーで目撃した光景だ。
地元では比較的大きなこのスーパー。7台あったレジは段階的にセルフ化され、現在、有人レジは2台に減っている。今では客もセルフレジに慣れた様子だが、過渡期には前述のように、客が誤って未精算の品を店外に持ち出してしまうトラブルも続出したという。
このスーパーの店員が語る。
「セルフレジは、基本的に値札のバーコードを読み込むポスレジ方式です。バーコードを正確に読み取れば問題ないのですが、不慣れなお客様には難しい。操作のヘルプや不正監視のため、複数名の店員をレジ付近に配置していますが、すべてに対応できていないのが現状。誤って、レジを通過していない商品を持ち出してしまったお客様にお声がけする際、このようなトラブルに発展することがあります」
都内で複数のスーパーの防犯業務に従事する「万引きGメン」にも話を聞いた。
「かつては手持ちのエコバッグや衣服に商品を隠す、あるいはレジで一部商品だけ精算し、カートの下に隠した商品を未払いのまま持ち帰る“カゴ抜け”の手法が主流でした。われわれは、それを現認して声掛けしていましたが、セルフレジでの不正を発見するのは難しい。レジに防犯カメラが設置されているものの、『うっかり精算できなかった』と言われればそれまでです」
高齢者を中心に利用者からも不満の声が出ている。
「セルフレジでもたついていると、後ろに並ぶ客の視線がつらい」(70代女性)
「会計だけでなく、駐車券の発行などセルフレジでは対応できないことが多く、結局、店員を呼ぶことになる」(60代男性)