日米欧で開発された電池技術で利益を得る中国
もともと、ナトリウムイオン電池の開発は、日本の東京理科大学の駒場慎一教授が2009年、世界で初めて安定的に100回以上の充放電が可能な電池を開発するなど、日本が世界の最先端を走っていた。
リチウムイオン電池の研究では、旭化成のエンジニアであった吉野彰氏が米国の物理学者と英国の化学者とともに2019年、ノーベル化学賞を受賞している。
日米欧で発明し、研究開発した電池技術を中国が事業化して成功を収めているのだが、この中で最も大きな利益を得ているのは明らかに中国だ。
中国の強さは、決断、行動の速さ、高い情報収集力につながる社交性の高さ、リスクを積極的にとることのできるアニマルスピリットなどであり、こうした点で、日本人、日本企業は差を付けられているように思う。
20大(共産党第20回全国代表大会)に注目が集まっているが、中国では体制などには全く無関係に、こうした激烈な企業が多数存在する。
そうした企業を引っ張る事業家たちだが、国家の発展を牽引する良質な経営者ばかりとは限らない。時には規則や法律さえ飛び越えても自己利益を極大化しようとする者たちが一定数存在し、中国経済の発展段階が上がることによって、そうした存在のマイナス面が目立ち始めている。
これから三期目に入る習近平政権だが、その統治体制がこれまでよりも社会主義寄り、保守的になりそうだといった指摘が多い。しかし、これはこうした“自由過ぎる”一部の人民を規制するために必要な措置であり、時代の要請であるといった捉え方もできる。指導者の思想や人事ばかりに目が向きがちだが、重要なのは社会の構成要員たちに対する冷静な観察や、評価ではなかろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。