フリーランスになるメリットとデメリット
次に、雇用契約から業務委託契約に変わることで得られるメリット、そして、その代わりに失うデメリットについて確認していきましょう。
【主なメリット】
・上司に指揮命令されることはない。
・通常の出退勤時刻という概念がない。
・自分の名刺を持ち、他社の仕事も自由に受注できるため、能力次第で収入増も期待できる。
・仕事に必要な支出を経費とすることができる(所得税・住民税が下がる可能性がある)。
【主なデメリット】
・契約期間が1年更新などで、簡単に契約解除されることがある。
・退職金制度はない。
・どんなに時間がかかっても契約した報酬しかもらえない。
・病気・産前産後・育児・介護休暇、有給休暇はない。
・個人事業主の場合、家族が負担ゼロで同じ健康保険に入る制度がない。
・個人事業主の場合、配偶者の国民年金保険料の負担ゼロで納付済みになる制度はない。
・仕事のために事故に遭ってケガをしたり死亡したりしても労災保険はない。
・過労死という概念がない。
・失業しても雇用保険の給付を受けられない。
・個人事業主の場合、病気やケガで働けない場合でも、健康保険の傷病手当金を受けられない。
・個人事業主の場合、厚生年金がないため、老齢年金・障害年金・遺族年金の額が下がる。
以上を見て、デメリットを上回るメリットがどれくらいあるでしょうか。それが大きいと考えられる人は、会社員を辞めてフリーランスを選ぶ選択肢はあると思います。
私自身はフリーランスです
ここまでやや厳しめにフリーランスについて説明をしてきましたが、私自身もフリーランスとして起業して約20年の身ですし、起業やフリーランスという働き方自体を否定しているわけではありません。その一方で、会社にとって都合の良い働かせ方としてのフリーランス化に、安易に飛びついてしまう人が続出することを懸念しています。
筆者自身は、フリーランスになって本当によかったと感じています。会社員時代とは違うやりがいや使命感を感じていますし、そうした思いに突き動かされ、励まされながら、ここまでやって来られました。その一方で、保障や退職金など制度面で会社員に劣る部分は自分自身で手当てしています。
フリーランスになるということは、起業することと同義です。その点を理解したうえで、志や知識を持って起業することや、育児や介護、自身の療養などのために自由な働き方を選ぶというのであればよいと思います。「フリーの方が自由だし今よりちょっと多く稼げそう」くらいの考えなら、安易に飛びつくべきではないでしょう。
【プロフィール】
川部紀子(かわべ・のりこ)/FP・社労士事務所「川部商店」代表。1973年北海道占冠村生まれ。生命保険会社で勤務したのち30歳で起業。大学の非常勤講師として講義を担当するほか、個別相談、セミナー・講演講師、各種執筆、テレビ・ラジオへの出演も多数。近著に『得する会社員 損する会社員 手取りを活かすお金の超基本』(中央公論新社)がある。