「バッキンガム宮殿」と「なんでんかんでん」
「ローバーやロータスのインポーターとして英国大使館から厚遇されて、ある時は『ミスター・ナンバラは“VVIP”(Very Very Important Person)です』と言われました。故・エリザベス女王からロンドンのバッキンガム宮殿に招待されて謁見したり、トニー・ブレア首相(当時)が開催した朝食会に参加したこともあります。バッキンガム宮殿は煌びやかイメージがあったけど、中に入ると意外と質素な造りでしたね」
今年9月に永眠し、英国民が国を挙げての厳粛な葬儀で別れを告げたエリザベス女王から招待されるまでに「成り上がった」日本人は、お金の扱い方も豪快だった。
「3000万円のベンツに乗って六本木ヒルズに住み、遠距離移動は取引先が用意したプライベートジェット。銀行の窓口で引き出した2億円のキャッシュを、デパートの紙袋2つに分けて持ち歩いたこともあります。会社が小さいころ、社員の大卒初任給は11万円ほどでしたが、ボーナスは奮発して“横にしても倒れない札束”(約400万円)を支給していましたからね。でも、私自身の生活はいたって質素。スーツは1万5000円ほどの量販店の既製品だし、自分の銀行口座にはいつも10万円くらいしかなかった」
そんなビジネスの絶頂期に出演したのが『¥マネーの虎』だ。常にクールな眼差しで起業プランの弱点を突き、理路整然と語りかける姿は多くの視聴者の心を掴んだ。人気ラーメン店「なんでんかんでん」の川原ひろし社長との虎同士のぶつかり合いも話題を呼んだ。
「普通の番組は事前に内容を打ち合わせるけど、『マネー』は収録に行くまで誰と共演するか、どんなプレゼン内容かまったくわからない。虎同士の主張が食い違い、収録中に本気の殴り合いが始まることもありました(笑)。僕は川原さんとやり合って有名になったけど、あれも意見が違っただけで、いまはすごく仲がいいですよ」
順風満帆で年商100億円を達成し、テレビの人気者にもなった南原さん。その後、インタビュー前編で詳述したようなホームレス生活へと転落したが、そこからの復活を果たせたのは、学生時代から培われたバイタリティあってのことだったのだろう。
(了。前編から読む)
取材・構成=池田道大