世界的に新型コロナウイルスの感染対策が緩和されていく中、中国は「ゼロコロナ政策」で厳しい規制を敷いてきた。しかし、その方針に中国国民の不満は爆発。さらに足下では不動産バブル崩壊の危機も囁かれている。習近平主席はこの危機をどう対応するだろうか。経営コンサルタントの大前研一氏が分析する。
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習近平国家主席は、2022年10月の中国共産党大会で異例の3期目に入り“終身皇帝”として独裁体制を盤石にした。だが実際、その足下はかなり危うくなっている。
私は9月の本連載(週刊ポスト2022年9月16・23日号)で、習近平は「2つの失策でひっくり返る」と予言した。2つの失策とは「ゼロコロナ政策」と「不動産バブル崩壊」だ。この見立ては今も変わっていない。
まず、ゼロコロナ政策は、すでに破綻した。これまで徹底的なロックダウン(都市封鎖)で新型コロナウイルスの封じ込めを図ってきたが、それに対する国民の不満が爆発して11月下旬には各地でデモや暴動が起き、一部は習近平退陣や政治的自由の拡大まで求める事態となった。
習近平および中国共産党が最も恐れているのは人民の反乱なので、ゼロコロナ政策の「出口戦略」を探らざるを得なくなり、急遽、隔離やPCR検査の規制を大幅に緩和したのである。
そもそも新型コロナ禍はある意味、自然災害であり、いくら防疫態勢を強化しても国民の大多数が免疫を獲得するまでウイルスという“見えざる敵”には勝てない。ゼロコロナ政策は万有引力の法則に逆らうような無理筋の愚策だったのだ。
だが、緩和を進めれば、ウイルスが蔓延して猛威を振るうことは避けられない。「感染していない人」が多ければ多いほど拡大しやすいからだ。中国製ワクチンの実効性が白日の下に晒されるかもしれない。中国政府もゼロコロナを解除したら感染爆発で「200万人の死者が出る」との試算を公表している。
ただし、習近平は自分が主導してきた政策の過ちを認めるわけにはいかないから、感染爆発の責任は市長や省長に取らせて結果的に集団免疫を獲得するというシナリオではないか。