もう1つの不動産バブルも、崩壊は不可避だ。これは日米欧など世界中が1990年代に経験したことであり、中国は今のところ不動産会社や地方銀行が破綻しないように国が懸命に支えて問題を先送りしているが、必ずどこかで支えきれなくなる。
中国の場合、不動産バブルの問題は日本や欧米よりもはるかに深刻だ。経営危機に直面している不動産会社だけでなく、これまでの不動産の値上がりで借り入れ余力ができた(トウ小平が言うところの“先に豊かになった”)人たちが2軒3軒と購入して多額の借金を抱えているからだ。
しかし、それらの不動産は投資用だから実需はない。つまり、中国の不動産バブル崩壊は、いわば“自然現象”であり、防ぐ方法はないのである。もっとも、この問題も、習近平は地方の市長などに責任転嫁することで鎮静化を図るだろう。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点 2023~24』(プレジデント社刊)など著書多数。
※週刊ポスト2023年1月1・6日号