すでに日本からの輸出品は円高でも競争力のある、高度な技術が求められる製品しか残っていない。一方で、価格が下がったら売れるような雑貨的製品の輸出はほとんどない。つまり、円安効果は限定的なのだ。
それに対して、円高になれば日本国民の購買力はどんどん上がる。資源や食料などの多くを輸入に頼っている日本では、円高で消費が減退するどころか、消費増になる。GDPの約6割を占める個人消費が伸びる結果、どんどん経済が成長することになる。
現実には、円高になって大変なのは輸出企業だけだ。しかし、それを日本のメディアが正しく報じないのは、輸出企業には広告宣伝費をたくさん払える大スポンサーが多いからだ。スポンサーが困るようなことは口が裂けても言わないということだ。
【PROFILE】1960年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。大手総合商社や欧米の金融機関を経て、ブティック型投資銀行を開設。「ぐっちーさん」のペンネームで経済金融評論家としても活躍中。『ぐっちーさんの 政府も日銀も知らない経済復活の条件』(朝日新聞出版刊)ほか著書多数。
※SAPIO2016年12月号