アベノミクスで一時(2015年6月)は1ドル=125円台まで円安が進んだが、今は100円近くまで戻し、マスメディアを中心に円高を警戒する声が喧しい。だが、自国通貨の価値が下がるのを歓迎するのは世界で唯一、日本だけだ。投資銀行家のぐっちーさんこと山口正洋氏が解説する。
* * *
ビッグマック指数(※注)をはじめとする購買力平価で見れば、現在の1ドル=100~103円程度の水準は妥当な為替レートだ。
【※注:その国のマクドナルド「ビッグマック」の価格が購買力を反映するという指数】
メディアは円高局面になるたびに、株価が下落するとか、輸出・外需依存度の高い日本経済は失速するなどと、不安を煽る。だが、それは大間違いだ。
日本企業のうち、円安で輸出が増え、業績が伸びて株価も上がる、というシナリオが当てはまる企業がどれほどあるというのか。
全売上高のうち、海外売上高比率が50%を超えるところを輸出企業と定義すれば、東証上場企業の中で輸出企業はわずか8%程度というのが実情だ。実際、アベノミクスがもたらした円安によって、輸出量が大きく増えたわけではない。