公的年金の受給額は、2022年4月と比べると0.4%も減額されている。一方で物価の上昇は続いているため、実質的な目減りは0.4%では済まない計算になる。もはや、公的年金だけでは、安心した老後を送るのは難しい。自分の力で自分のために備える「個人年金保険」との併用を考えてもいいだろう。
保険会社が扱う個人年金保険は、5年間、10年間などの一定期間年金が受け取れる「確定年金」と、公的年金のように一生涯年金が受け取れる「終身年金」の2種類がある。
決められた額の年金(保険金)に「配当金」がつくことが、個人年金保険の大きなメリットといえるだろう。
例えば、75才以降の10年間年金が受け取れる「10年確定年金」に50才で加入して、75才まで保険料を払い込む場合。受け取れる年金の年額が60万円だとすると、配当金だけで67.4万円にもなる。配当金だけで、1年分の年金額を上回る商品もあるのだ(別掲図参照)。
配当金の金額は運用次第で上下するため、景気によって金額は変動する。だが、前出の商品は2008年のリーマンショック時でも、配当金が「ゼロ」になっていない。
この商品の場合、25年間で払い込む保険料は約580万円。年金と配当金を合わせた受け取り総額が約657万円なので、返戻率は113%だ。
万が一、年金開始日前に亡くなってしまった場合は、解約返戻金と同額の死亡払戻金が支払われるため、保険料がムダになりにくいのも、生命保険ならではのメリットだ。
個人年金保険料も控除される
生命保険は、支払う保険料に「保険料控除」があり、個人年金保険も適用される。ファイナンシャルプランナーの松浦建二さんが言う。
「一般生命保険料だけでなく、個人年金保険料のほか、介護医療保険料にも控除があります。しかし、生命保険全体の新規契約件数が約1200万件なのに対し、個人年金保険の契約件数は約65万件。一般的な生命保険の20分の1ほどの契約件数なので、その分、個人年金保険料控除を利用している人も少ないと推測されます」
生命保険料控除は基本的に、一般生命保険、個人年金保険、介護保険のいずれも、4万円が上限だ。税理士で公認会計士の木下勇人さんが言う。
「それぞれ、保険料が4万円を超えると、その分は控除されません。さほど大きな金額ではないので、控除目当てでいくつも保険に入るのはナンセンス。もともと複数の保険にバランスよく入っている人なら、控除を受けることで、保険料を抑えられます」